ディーコンのゴルフボール

ウォーターワールドという映画がある。
1995年に公開の、ケヴィン・レイノルズ監督作品。地球温暖化で大陸のほとんどが海に沈んでしまった世界で、まだ沈んでいない唯一の土地「ドライランド」を巡る戦いを描いたSF映画だ。

ユニバーサルスタジオジャパンにはこの映画をモチーフとしたスタントショーがある。映画のストーリーに沿った物語で、ミュータントヒーローのマリナーと、極悪集団スモーカーズのボスであるディーコンとの戦闘が繰り広げられる。

自分はこのショーが好きなのでUSJに行くたび観ているのだが、よくよく考えるともう4年ほど通いつめていたことに気づいた。4年の間にもちろんキャストは変わるし、今年だったか去年だったか忘れたが、ショーの内容にもわずかだが変化があった。
1年毎にキャストの変更が入るので、今ではもうすっかり以前の見慣れたメンツではなくなってしまった。驚いたのが、4年前からよく観ていた保安官役の人が今年に入ってディーコン役にシフトチェンジしていることだった。頭を丸め、ヒゲを蓄え、筋肉はムキムキに…。ディーコン姿の彼を初めて見た時、以前とは別人のような厳つい風貌のせいで、すぐに彼とは気づかなかった。


ディーコンというと、ショー中彼が登場後すぐに客席に向かってゴルフボールを打つ場面がある。ボールを手にした観客が立たされ、危うくディーコンの手下に撃たれそうになるというちょっとしたファンサービスみたいなものがあるのだが…

今日ボール取っちゃった。


しかも先述した保安官の彼が打ったボール。そんなことある?いいの?私なんかが取って…。
大勢の客の前で立たされヘラヘラするのはかなり恥ずかしい。羞恥心に足が生えたみたいな人間なので。それでも以前から応援してきた彼と(演技上の都合とはいえ)コミュニケーションが取れるのは嬉しかったけど。

でもやっばり当の自分といえば、いざボールを手にした時にはもう突然の出来事に唖然としっぱなしで、無も同然だった。



何はともあれ、貴重な経験だった。
オタク心を抹消してピュアな気持ちで見てたから幸運が舞い込んだのかな。違うか。
いやでもとにかく嬉しい。
ボールを飛ばしてきたディーコンが知ってるディーコンだったからこその嬉しさも大きいし。
彼は4年もネチネチと追いかけてきたキモ人間のことなど1ミクロンも知らないだろうが…。


飛んできたのはプラスチック製の軽いボールだった。これをうまいこと飛ばすのはちょっとコツがいりそう。